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BRANDING × STORY

技術の先に、人の仕事を描く。

文・編集 I'm Hopping  / 

記事の考え方を表した概念イラスト
記事のテーマを表した概念イラスト(公式キャンペーン画像ではありません)

自社のパンフレットやWebサイトを開いてみてください。一番大きく写っているのは何でしょうか。

おそらく製品の写真と、スペック表です。性能も実績も、きちんと並んでいる。それなのに、競合の資料と並べると見分けがつかない。最後は価格の比較になってしまう。

いまはそこに「AI搭載」という言葉が加わりました。どの会社も同じ言葉を掲げるほど、違いはかえって見えにくくなっています。

設計ソフトウェア大手のAutodeskは、この流れに逆らう選択をしました。

01

REPORTED CONTEXT

何が起きたのか

Autodeskは、設計図を描くソフト「AutoCAD」、建築設計の「Revit」、映像制作の「Maya」などを持つ、製造・建設・メディアの現場を支えるソフトウェア企業です。近年は自社製品へのAIの組み込みを積極的に進めています。

Autodeskは2026年9月、キャンペーン「The World Is Yours for the Making」を発表しました。主役に据えたのは、技術そのものではなく、それを使う人たちです。

描かれているのは、Autodeskを使って設計し、ものをつくる人たちの仕事です。建築家、エンジニア、製造業の担い手、映像の作り手。現場でものをつくる人たちの創造性と仕事への情熱を、感情に訴えるかたちで描きました。

AIを製品に組み込む会社が、広告では技術を背景に置いたのです。AIを否定したわけではなく、映像制作にも自社のFlow Studio、Maya、Flameを使っています。

米国の配信TV、デジタル、音声、SNSに加え、主要都市でのTV放映やラスベガスのSphereでの展開も公表されています。ここでは、施策の効果を断定せず、この選択の意味に絞って読み解きます。

02

EDITORIAL PERSPECTIVE

なぜ効くのか——鏡のように、お客様の誇りを映す

一つ目の理由は、勝負する土俵を移したことです。

AIの時代、ソフトウェアの競争は「どちらが速いか」「どちらが正確か」の比べ合いになりがちです。その土俵に乗れば、最後は価格か、より大きな企業との体力勝負になる。Autodeskは今回の広告で、その土俵をずらしました。

代わりに選んだのは、お客様の「自分は何者か」という誇りです。AutoCADを使う人は、自分を「ソフトの利用者」だとは思っていません。建築家であり、エンジニアであり、つくり手だと思っている。その自己像を鏡のように映し返すことで、Autodeskは「道具を売る会社」から「仕事を共にする存在」へ関係を結び直そうとしていると考えられます。

二つ目の理由は、言葉にされない不安に先回りしたことです。

AIが広がる現場では、「自分の仕事はなくなるのか」という不安が静かに漂っています。そこで「中心にいるのは人間のつくる力だ」と言い切る。これは感情に訴えるだけでなく、お客様が安心して使い続けられる理由にもなります。

お客様の仕事を広告で描く手法自体は、珍しいものではありません。けれど、「誰もがAIを語る中で」という背景に置いたことで、その選択が際立ちました。同じ施策でも、置かれた文脈が意味を変えるのです。

記事の考え方を表した概念イラスト
記事の考え方を表した概念イラスト(公式キャンペーン画像ではありません)。
03

EDITORIAL PERSPECTIVE

日本の中小企業が使うなら

そのまま真似するのは難しい面があります。

日本の商習慣では、お客様の社名や担当者の顔を出す事例紹介は、許可を取るのが大変です。競合に手の内を知られたくないという、お客様側の事情もあります。自社の事例でお客様本人を広告に登場させるなら、こうした事情を踏まえた許可取りが必要です。

一方で、日本には追い風もあります。ものづくりの現場には、職人の技や技術の継承を大切にする文化が根づいています。「人のつくる力を讃える」というメッセージは、日本の現場とむしろ相性がいいのです。

すぐ試せる形を三つ挙げます。

一つ目は、顔や社名を出さずに「仕事の痕跡」を見せること。お客様の名前は出せなくても、仕事の工程や現場の風景なら出せることがあります。自社の機械で加工された部品の手触り、作業する人の手元。主語を「私たちの製品」から「あなたの仕事」に変えるだけで、伝わり方が変わります。

二つ目は、会社案内を「お客様の仕事の物語」に組み替えること。強み、沿革、スペックの順に並べるのをやめ、「私たちの製品やサービスを使って、お客様の現場では何が生まれているか」から始めます。道具の説明ではなく、道具が可能にした人の仕事を語るのです。

三つ目は、同じ考え方を採用にも広げること。AIが広がる中で「この仕事はなくならないか」と感じている求職者に、「この会社は人の技と判断を中心に置いている」と伝える。大手との差をつけにくい採用の場面で、数少ない武器になります。

04

EDITORIAL PERSPECTIVE

デザインの視点から——何を見せないかを決める

公式サイトではキャンペーン映像や制作の舞台裏も公開されています。以下は、この考え方を自社の発信に応用するためのデザイン上の原則です。

AIを打ち出す広告には、青白い光、幾何学的な図形、未来を感じさせる映像効果がよく使われます。どれも洗練されていますが、そこには人の気配がありません。

人を主役にするなら、見せるものと同じくらい「見せないもの」の判断が大切になります。処理の速さを数字で見せない。データの流れを図で見せない。引き算をした分だけ、人の存在が前に出てきます。

これは、紙面や画面のどこに何を置くかという設計と同じ原理です。一番手前に置いたものが、受け手にとっての主役になります。カタログの最初のページがスペック表なら、意図していなくても「主役は製品です」と伝えていることになるのです。

記事の考え方を表した概念イラスト
記事の考え方を表した概念イラスト(公式キャンペーン画像ではありません)。
05

EDITORIAL PERSPECTIVE

AIで量産する前に、確かめてほしいこと

このテーマで書く以上、私たちの立場もはっきりさせておきます。私たちアイムホッピングも、AIを日常的に使っています。文章の原案も、写真の補正も、企画のたたき台づくりも、AIは頼れる道具です。

それでも、自社の物語の「主人公を誰にするか」は、AIで完結させないでください。

AIに「当社の強みを魅力的に書いて」と頼めば、それらしい文章はすぐに出てきます。けれど、そこに書かれるのは、どの会社にも当てはまる言葉の平均です。お客様の現場で何が生まれ、私たちは誰の仕事に誇りを持ってほしいのか。その核は、お客様と話し、社内で話し、人と対話する中でしか見つかりません。

Autodeskがやったことも、突き詰めれば同じです。技術を語る前に、誰の仕事を讃えるのかを決めた。核が決まってから、AIに言葉や絵を量産させる。この順番を守るだけで、AI時代の発信は他社と同じ顔をしなくなります。

06

EDITORIAL PERSPECTIVE

まず一つ、試してほしいこと

自社のWebサイトのトップページを開いて、写っている「人」の数を数えてみてください。

一人もいなければ、それは無意識のうちに「主役は製品です」と宣言しているということです。

次に、「お客様の現場で、自社の製品やサービスが一番役に立っている瞬間」を一場面だけ書き出してみてください。その場面が、あなたの会社の新しい表紙の候補になります。

Source & editorial notes

参考記事:Adweek ↗公式発表 ↗

報道された事例をもとに、アイムホッピングが編集・解釈しています。日本向けの活用例は編集部の提案で、施策の効果を実証するものではありません。

図解・挿絵は記事の考え方や架空の場面を表現したもので、各社の公式広告素材ではありません。

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